あてもなき 夢想に耽らぬ 人やある

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寝ても醒めても 『ファンジニ』


ファンジニと若き高級官吏、互いに相手を心底愛しているのがひしひしと伝わってくるのに、口では「もっと大切な使命のためには愛など犠牲にするしかない」みたいなことばかり言っております。そこが歴史物の有利なところで、余りに気高い科白でも嘘っぽく聞こえません。もっとも男の方はやはり我慢が出来ぬらしく、たとえ世間の壁にぶつかっても添い遂げてみようではないかと迫りますが、女は「そんなの夢物語よ」と冷たく突き放します。どうしてこ~ゆ~時にいつも、女は冷たい態度が取れるのでしょう... 

同じ韓流でも現代ものでは、ちょっとした時間差で二人がすれ違うようなシーンが多々あり、「ナニこれ? 脚本家の胸三寸じゃないの」と白けてしまいますが、歴史物は正に現代ではちょっと口に出せないような科白をちりばめることで、小細工をしなくてもドラマを盛り上げられる。今回 (7月13日) だって、男が未練を断ち切って都に帰ろうとする渡し舟の場面で、てっきり数分の差で二人は悲恋の別れと思いきや、結局男はその地に留まることになり、一緒に漢詩を書いては鑑賞し合ったりじ~~っと見つめ合ったり。そのくせ一緒にはならないなんて、あ~も~何て禁欲的なの!

ところでファンジニには、まだ若いのに妙に渋い顔立ちの青年が仕えていますが、これが武芸の達人で、既に一度ならず彼女の窮地を救っています。夜となく昼となく彼女を見守っているのですから、その色香に心の動かぬ筈は無いのに (と思うは私が余りにリビドー的人間だからか知らん)、徹底して無表情のまま、ひたすら彼女に尽しております。この青年が本筋に絡んでこないのは不思議なことや、と思っていたら案に違わず。

ある時、書庫で一冊の詩集を読んでいるところを人に見られ、読み書きなど出来ませぬと言っても、もう後の祭り。見咎めたファンジニの母の後見人らしき中年男によれば、その詩集は権力を愚弄しこの世の中を嘆く言葉で溢れていて、今でも表立って読むことは御法度の書物です。「このような詩集に読み耽るとは、お前は一体何者だ!」と問い詰められても、「名も無き放浪の身にございます」とのみ。

彼もこれで追い出されてしまうのかと思えば意外や意外、同じ中年男がファンジニの母にこう語ります:「あの詩人に精通しているならば、並の者ではない筈。なのにあのように方々を渡り歩いているところを見ると、幾多の権力争いや謀反に巻き込まれ、犠牲になった人間の息子であろう。身を立てるに充分なだけの学識と身分があっても決して世間に戻れぬ者、そんな者こそミョンウォルの伴侶に相応しいと思うのだが」。

そしてこの二つの場面の間に、青年が深夜、林の中で剣の修練をするところが出てきます。疾風が木立を駆け抜け、舞い上る無数の木の葉が月の光を受けて風に漂う、その風に乗らんとするかの如く走りつつ剣を振る姿が、美しいピアノの旋律をバックに秀逸な映像に仕上っていて、何度見ても飽きません。

しかもそのピアノ曲が、既に購入したサウンドトラックのCDに入っていない。この調子だと結局、いずれ出るDVDを全巻購入するしかなくなるかも。

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