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『相棒』から消えた寺脇康文
暫く前から、寺脇康文が水谷 豊とのコンビから外れるらしいという噂を聞いて、色々思い巡らして来ましたが、どうにも納得できません。
初めて寺脇康文が出た回はストーリー展開が新鮮で、再放送も見ましたが、あれからもう8年も経ったとはびっくりです。最近放映が終ったばかりのはSeason7だそうで、始った昨年10月に既に、これを最後に寺脇康文は8年続けたドラマから「卒業」することが決まっていたとのこと。ご本人も「寂しいですが、卒業まで一生懸命演じていきます」と全力投球を表明 ...
というのですが、その「卒業」と称するのが納得できません。松本基弘チーフプロデューサー曰く、「エリートの捜査一課から警視庁の "窓際部署" である特命係に配属されて、8年も在籍する薫の心の変化を考慮。物語のリアリティーを追求した時、薫なら "このままでいいのか?" と考えるはず」と、Season4から転機を考えていたんだそうです。
しかし物語のリアリティって何ですかね。大体、タイトルバックに流れる主題歌が「Life is a game...」と歌ってるじゃありませんか。それに、東ちづる主演の『温泉若おかみの殺人推理』シリーズなんて、女将と若女将のコンビという設定で放浪の仲居さんじゃありません。それなのに毎回旅館のある場所が変って、その都度ゼロから出発し直すようなものですが、別にリアリティが無いなんて誰も思いやしません。
しがない世田谷税務署の窓際署員しかしてその正体は国税局の陰の査察官、の窓辺太郎 (小林稔侍) だって、かって自分の落度で死なせてしまった部下の未亡人に内心惚れていて、しかもその知的でカワユイかとうかずこが「私の夫を死なせたなんて考えないで私と結婚して!」と心中叫んでいるのが見え見えなのに、無理して気付かぬ振りして、一方では査察部長の姪の椿 薫 (麻生祐未) に一方的に慕われる、そういう人物構成でもうン十年。それでも、設定にリアリティが無いなんて非難する人はいません。
小野田官房長 (岸辺一徳) も杉下右京に言ってましたよ、「僕は今まで、特命係を動かしているのは君だと思ってました。でもそうじゃなかった...」。私も「今まで、『相棒』を面白くしているのは杉下右京だと思ってました。でもそうじゃなかった...」と言いたいくらいです。杉下右京がいなければ勿論ストーリーが成立しない、しかし寺脇康文が相棒だからこそ面白かったんです。
そもそもあのドラマは、どの人物も演じるタレントが正にはまり役という感じで、絶妙の配役です。捜査一課の三人にしても、大河内主任監察官にしても、それぞれの持味が生かされている。中でも寺脇康文と岸辺一徳が光っていた。岸辺一徳は他のドラマでは、部下の女性社員を陰険に苛めるような役ばかりで、見る気もしませんでしたが、『相棒』の小野田官房長だけは段違いに面白い。有能でシニカルな役人の化身みたいな顔して、時々肝心なところになると杉下右京にしかるべき捜査をさせる。ぬけぬけと臭い科白を吐くのに、あの能面みたいな表情がぴったりです。そして寺脇康文はと言えば、杉下右京ほどの頭脳の切れは無いけれど、熱血漢でおっちょこちょいで飄々としたところが、何とも言えない味を醸し出していました。
そしてSeason8になっても他のキャストは全く変らないのに、何で寺脇康文だけが去らなくちゃいけないんでしょう。
Season8の初回をじっくり見て、本当の理由らしきものが段々分ってきました。卒業したかったのは寺脇康文じゃなくて、プロデューサーだかシナリオライターだかの方だったんじゃありません? つまり、彼等が少し違うコンセプトで新シリーズをやりたかった。しかしそれは初回を見ればどうやら、亀山 薫の後釜になった神戸 尊 (及川光博) が、杉下右京と知的ゲームで張り合いつつ時々難癖をつける、というものらしい。勿論それは寺脇康文の持味では難しかった。それを、「亀山 薫があれ以上続けていては、彼の人物像にリアリティが欠けることになる」だなんて、視聴者を馬鹿にしてます。
だいたい新路線と言っても却って詰まらなくなっただけです。杉下右京とは対極にあるような亀山 薫とのコンビにして、知的ゲームは杉下右京と悪い奴らとの間に集中したのが、良かったんです。今更、杉下右京と小野田官房長それぞれの二番煎じを、足して二で割ったみたいな神戸 尊と組ませたって、面白いわけありません。
監督も和泉聖治に戻ったというのに、制作陣は一体何を考えているのでしょうか。人気が出過ぎて、何か勘違いでもしているのでしょうか。私も、あと8年もしてこのブログに毎日アクセスが何百もあるようになると、本質を見失うようになってしまうのか、お~怖...
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え~っ! うっそ~!