あてもなき 夢想に耽らぬ 人やある

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時の流れが実感できる歴史年表


(日本史年表に加筆・訂正)

歴史書の巻末にある年表や市販の年表では、事件の少ない世紀はほんの数行、多い世紀は数ページに亘るという具合に、時間軸が伸び縮みしていて、様々な出来事がどのくらい接近し或いは隔たっているのか、感覚的に掴めません。そこで日本とフランスについて、時間軸の目盛を等間隔にした年表を作り、読書の際などに重宝しています:

  日本史年表
  フランス史年表

20年以上前に、歴史上の主な出来事を記入して大枠を設定し、それから折りに触れては興味を感じた項目を追加して育ててきたものですから、ご覧の通り手書きです。読みづらい箇所はご容赦下さい。

時間軸が伸び縮みという表現は分り難いかも知れませんので、一気に話を広げて、地球の歴史46億年を考えてみます。その方面の解説書を読むと、地球に原始の海洋が形成されて何億年かたち、

  生命が誕生したのが:40億年前
  藍藻類の発生:29億年前
  酸素に富んだ大気の形成:20億年前 (最後の注参照)
  真核生物の誕生:18億年前 (?)
  脊椎動物の出現:4.8億年前
  哺乳類の出現:2.3億年前
  恐竜の絶滅:6500万年前
  人類 (ヒト属) の出現:200万年前
  文明の誕生:1万年前

などと書いてありますが、これでは哺乳類や人類の出現が地球の歴史全体の中でどの辺のことなのか、全くイメージが浮かびません。

ところが岩波講座『分子生物科学』の第三巻『生物の歴史』に、46億年を一年に縮小した図があります。それによると、1月1日午前0時に地球の歴史が始ったとして、

  生命の誕生:2月17日
  藍藻類の発生:5月15日
  酸素に富んだ大気の形成:7月25日
  真核生物の誕生:8月10日 (?)
  脊椎動物の出現:11月25日
  哺乳類の出現:12月12日
  恐竜の絶滅:12月26日
  人類 (ヒト属) の出現:12月31日の午後8時
  文明の誕生:同じ日の午後11時59分

といった調子で、気の遠くなるような時間の中での、人類の位置が非常に鮮明になります。

これにヒントを得て、日本とフランスについて、西暦0年以降をカバーする年表を等間隔で作ってみたわけです。具体的には、A4 一頁で100年と決めて、罫線が30本か40本入ったA4紙を用意し、十等分した線のところに一枚目は 0, 10, 20,..., 100、・・・・・、二十枚目は 1900, 1910,..., 2000 などと記した上で、まず大事件だけ書き込みます。それから少しずつ、自分に興味のある事件や文学作品などを追加していったのです。歴代の王朝・治世や特別な人物の生誕から死亡までの期間を、ページの端に直線で表示するような工夫もしました。こうして時間の目盛を等間隔にした年表を作ってみると、様々な事件の間の時間的な隔たりがはっきり見えてきて、色々と面白い発見があります。

日本史で言えば、平将門の乱は940年前後、即ち『土佐日記』と殆ど同じ頃に起っており、これから平安王朝の花が開こうという時期に、地方では既に大規模な反乱の起きていることが見えます。下って北斎『富嶽三十六景』や広重『東海道五十三次』などの作品は、まだまだ江戸文化華やかなりし頃のように感じていたのに、実はそれぞれ1831, 33年と、ペリー提督来航のほんの20年程前であるのを発見して、意外でした。大塩平八郎の乱 (1837)、蛮社の獄 (39)、天保の改革 (41〜) などは更にその後です。そして当時の庶民は、幕府崩壊という大事件が迫っていることなど想像もしていない... このような出来事が相次いで起きているのを実感できるのも、時間の目盛を一定にしたからこそです。
 また日本の歴史にとって中国は密接不可分の関係にありますが、唐・宋・明・清などの時代をページの右端に直線で示すと、その文化的影響の大きさを改めて印象づけられます。

フランス史でも、ルイ14世の治世は1643〜1715と72年間も続きますが、スペイン、オランダなどを相手に戦争をしまくる一方、東インド会社や西インド会社を設立して植民地政策を推進。国内では、フロンドの乱やらジャンセニスムの異端事件に二回の大飢饉が起り、文化面では (ニュートンによる万有引力の発見に続いて) ラ・ロシュフコーの『箴言集』、ラ・フォンテーヌの『寓話詩』、パスカルの『パンセ』と、今日古典と呼ばれる作品が毎年のように発表される... といった具合ですが、時間の目盛を均等にしたお陰で、様々な事件が接近しまたは離れている様が、良く掴めます。更に、一世代30年、人生70年といった尺度を思い浮べながら眺めていると、歴史の流れが一味違って見えてきます。
 例えばランスの大聖堂は、1210年に着工して正面二つの鐘塔が完成したのが1475年、その間実に250年以上です。これを私の年表で見ていると、最初に作業に加わった石工などは、大聖堂が完成した姿を見ること無く一生を終えたこと、恐らくそれを知りつつ作業に従事したのであろうこと、などが実感を以て迫ってきます。何十人もの人が、完成した姿を見られないのを承知で一生を工事に費やすなど、現代の我々には想像も出来ません。

実は加藤周一『日本文学史序説』に、文学作品を時代の社会・経済的背景の中に位置付けて考えるというアプローチが展開してあり、これが岩波講座『生物の歴史』のアイデアと結び付いて、自分流の年表を作ってみようという気になったようです。どのような事件を書き込んでいくかは私の興味次第で、何もかも入れないからこそ時間の目盛を等間隔にできるとも言えます。

注1:「酸素に富んだ大気の形成ってどいういうこと?」と不思議に思われるかも知れませんが、原始地球の空気中には炭酸ガスはあっても酸素は無く、藍藻類という微生物が光合成によりせっせと酸素を吐き出してくれたお陰で、現在のような大気ができ上ったのだそうです。岩と水ばかりだった地球と生命が繰り広げた、壮大なドラマです。

注2:どなたかこの年表をWordかExcel文書の形で再現して下さったら、大歓迎です。読者の方がダウンロードした後、追加・修正して自分用の年表を作るのも格段に楽になりますし、今後の歴史研究に資すること大でありましょう。だって、時の流れの感覚を欠いた歴史研究なんてね〜...

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