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『ターミネーター4』とタイムトラベル
見てきました。6月13日に封切りしてまだ5日目というのに、映画館には行列も無く中に入ってもガラガラ。ゆっくり好きな位置から鑑賞できていいやと思ったわけですが... 全くの期待外れでした。
御存知『ターミネーター』シリーズ、『1』は雰囲気が何となくB級映画的でしたが、意外な設定が面白かった。その設定に潜んでいたポテンシャルが『2』で一気に爆発。映画館でも見たし、テレビで放映されるとつい見てしまうし、正に傑作です。良い人... じゃない良いロボットになったシュワちゃんの活躍もですが、液体金属製のロボットが全く無表情な顔してしつこく追跡してくるところなんか迫力満点。サイバーダイン社に侵入して爆破するまでのストーリー展開も良かったし、最後の数分間も実に印象深かった。『3』が意外と印象が薄いのですが、まあ楽しめました。
『4』は新たな三部作の一本目という触れ込みだし、遂に未来で機械が人間達と戦うという予告編をテレビで何度も見せられて、シリーズ・ファンとしてはわくわく。映画館まで出掛けて映画を見るのも何年ぶりかだったんです。それがやたらに大音響を聞かされるばかりで、私は耳を塞ぎながら見ましたがそれはともかく、見終って全然興奮が残りません。
ど~してあれほど面白くないのか、気になって仕方ないので、にわか評論家です。監督は『1』『2』がジェームズ・キャメロン、『3』はジョナサン・モストウ、『4』はマックG。この人は『チャーリーズ・エンジェル』シリーズ (御存知ない方はネットで調べるほどの価値もありません) の監督だそうですから、出来が良くないのも当然、ジェームズ・キャメロンを監督に起用しなかったのが第一の敗因、と言いたいところですが...
やはりシナリオが弱いんじゃないでしょうか。見ている間はアクション場面についつい引き込まれますが、SFなのにハイテク兵器を駆使した戦闘より肉体のぶつかり合いが多くて、西部劇並です。生身の人間であるジョン・コナーが、鋼鉄のロボットに幾ら周囲の壁や機械に叩きつけられてもまだ戦えるのも、余りにリアリティに欠けていて白けます。期待した空中戦のシーンも味が薄くて、肩透しでした。
根本的には、ストーリーそのものに深みが無いってことでしょうか。映画としての全体は部分の単なる総和であってはいけないのに、部分的なエピソードの繋ぎ合わせの域を出ず、全然盛り上って行きません。しかも意味の無い細部が妙に強調されて、全体の流れから浮き上っているところさえあります。
というわけで、この映画を見て唯一の収穫は、コナーの妻ケイトを演じたブライス・ダラス・ハワードです。『Xファイル』のスカリー捜査官を演じたジリアン・アンダーソンと並んで、私好みの洋風美女の極め付きって感じで、ほんとに見とれちゃいました (誤解を避けるために申しますが、私は『Xファイル』には全く興味ありません。偶然テレビ放映にぶつかるたびにあの捜査官を眺めていただけです)。『4』が不作でも『5』が完成したらまた見に行きますから、ケイト・コナー役だけは変えないで! お願い!
それにしても、『2』で分ることですが、『1』でシュワちゃん演じた悪者ロボットが破壊された後、その頭脳の一部がサイバーダイン社に回収・保存され、それがコンピュータ技術の飛躍的な発展を可能にしたらしい。そのあげくに開発された超高性能コンピューター 「スカイネット」 が意識を持ち始めて、人類を抹殺しようとするに至る。スカイネットが人類を核攻撃した後も、生き残って抵抗を続ける人間達がいてそのリーダーがジョン・コナー。人類との戦いに最終的に勝利するため、彼が生れる前に母親を抹殺してしまおうと、スカイネットが現在に送り込んだのが『1』の悪者ロボット... つまり、未来のスカイネットが現在に送り込んだ技術が鍵となってスカイネットが出現する、という時間旅行ものにはよくあるカラクリです。明らかに堂々巡りですから、どの瞬間が一番最初なのかと考えても埒の明く筈はありませんが、傑作というのは堂々巡りをそうと感じさせないから不思議です。
時間旅行SFには、何やらあっという間に私を非日常の世界に誘い込む魔力があって、精神分析的背景つまりリビドー的要因でもあるのじゃないかと思うくらいです。そこで最後にタイムトラベルを扱ったSFのお勧め三大傑作。
1)アイザック・アシモフ『永遠の終り』:アシモフが書いた唯一の時間ものSF。時は500世紀の未来。「永遠」という名前の組織が作られて、過去・未来に亘って歴史の流れを監視・修正している。11万世紀という遥かな未来では、そんな組織に過去をいじられたために自分達の現実の存在確率が極端に低くなっていることを知り、「永遠」を消滅させる計画を立てる。そして時間監視員の一人を誘惑すべく、ハッと息を飲むような美女を送り込んできて...
2)今日泊亜蘭『光の塔』:ある日突如として空が裂けて、その向うは虚無かと思う間もなく、現代技術の域を絶する飛行物体が無数に現れて世界中の都市を焼き払って行く。それが何と、地球の未来からの攻撃なんです...
3)小松左京『果てしなき流れの果てに』:数語で紹介することは私の能力を遥かに超えますが、タイトルを見るだけで充分読みたくなるでしょう。
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ご存知なんですけど...
実は恥ずかしながら私も同じ傾向にありまして、あの連載に出てくるジョン・コナーの母親はともかく、美少女ロボットとの触れ込みの娘が、全く美少女に見えないんです。残念ながら、毎週土曜に鑑賞するに至っておりません。折角楽しみにしておいでなのに、ご免なさいネ。