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物価高対策への「逆噴射」(朝日)


物価高対策への「逆噴射」 日銀の異次元緩和継続、理屈の通る政策か
(2023年9月22日)

 政府も日本銀行も、物価高に苦しむ国民生活を改善したいと真剣に考えているのだろうか。残念ながらかなり疑わしい。

 日銀は22日、金融政策決定会合 (年8回開催、メンバーは総裁以下9人) を開き、マイナス金利や、低い長期金利で「物価上昇」をめざしている現行の異次元緩和を続けることを全員一致で決めた。

 念のため繰り返し説明するのだが、日銀は物価高の下で「物価を抑える」ための政策をするのではない。「物価を上げる」ための政策を続けるというのである。

 折しも22日朝、総務省が発表した消費者物価指数が、歴史的な物価上昇がいまだに根強く続いていることをはっきり示している。それによると、8月の消費者物価指数 (生鮮食品を除く総合指数) は7月に続いて前年同月比3.1%という高い上昇率となった。

 あいかわらず値上がり品目は広範にわたっている。食料品では調理食品、菓子類、アイスクリーム、飲料などが軒並み10%前後の上昇だ。さらにトイレットペーパーは15%、携帯電話通信料は10%、宿泊料は18%、ペットフードに至っては31%もの上昇率である。

 消費者物価指数はこれで12カ月連続で3%超えが続き、日銀がインフレ目標の到達点としている「2%」超えは17カ月連続となっている。

「理想」のため、国民生活を犠牲にするのか

 この状況をもってして、さらに物価を上げる金融政策が望ましいと考える国民は、どれだけいるだろうか。

 ところが日銀は十分な賃金上昇を伴うかたちでの望ましい2%インフレではない、という理由で、異次元緩和を続けるというのだ。これでは日銀自身の「理想」とする日本経済のありようを実現するために、足元の国民生活を犠牲にしていると言われても仕方ないのではないか。

 しかもその日銀の見立てや理想も、本当に理屈の通った正しいもの、望ましいものなのか、かなり怪しくなっている。米国の中央銀行、FRB (連邦準備制度理事会) の例が一つの教訓となるのではないか。

 FRBのパウエル議長も2年半前には「23年末までゼロ金利を続ける」と言っていた。だが想定以上に激しく、根強い物価上昇の前に昨春、前言を撤回してゼロ金利を解除したのだ。

 FRBはその後、猛烈な勢いで利上げを続け、現在の政策金利は5.25~5.50%と22年ぶりの高さとなっている。

 FRBだけではない。ユーロ圏の中央銀行、ECB (欧州中央銀行) や英イングランド銀行など主要先進国の中央銀行は軒並み、過去30年で最も積極的な利上げサイクルのただ中にある。

 インフレ水準が欧米よりまだ低めとはいえ、物価上昇の大きなうねりは日本にも同じように及んでいる。日銀だけがいまだ超金融緩和を続けるのは異様である。

 朝日新聞が今月16~17日に実施した全国世論調査によると、岸田政権の支持率は37%と低迷している。

 マイナンバー問題や福島第一原子力発電所の処理水問題、内閣改造の結果なども影響しているとはいえ、やはり物価高という生活を直撃している問題への対応の甘さが大きく影を落としているのではないか。物価高に対する岸田政権の対応について、77%の回答者が「評価しない」と答えている。

 岸田文雄首相は来月まとめる経済対策に物価高対策を盛り込む方針だ。9月末が期限だったガソリンや電気、都市ガスへの補助金の継続などが検討されている。

 それも一時的には家計のエネルギー支出を抑える効果を発揮するかもしれない。国民にはそれなりに歓迎もされるだろう。

 しかし、経済学的に冷徹に評価するなら、これは誤った政策である。たとえエネルギー支出への補助金であろうと、総じて見ればエネルギー需要を増やし、さらにエネルギー価格を引き上げてしまう。物価高対策としては本来は逆効果なのだ。

 つまり政府はいまだ理屈の通った物価高対策をやっていない。効果のある対策をする余地のある日銀は、異次元緩和の継続で物価高へ「逆噴射」している。

 政府も日銀も「国民のため」という耳に心地よい言葉で政策を説明しているので、実態が多くの国民には伝わっていない。国民生活の改善にはっきりと効果を及ぼす科学的で理屈の通った政策に、一刻も早く改める必要がある。(編集委員・原真人)

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