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植田総裁は本当に仕事人なのか(朝日)


引用文の最後に「植田総裁は、一体何を目指しているのか」とあるが、前任の黒田ナニガシの面子を守ることではないか。
 
新総裁就任早々から金融緩和路線を転換したら、「異次元緩和」に拘り続けた黒田ナニガシが、間違っていたと宣言するようなものだ。色々理屈を付けているが、「緩和路線は維持」という姿勢は、黒田ナニガシの面子を潰さないことを何よりも優先しているとしか思えない。円安に起因する物価高に苦しむ国民よりもだ。

聞くところによると、黒田ナニガシは退任後どこぞの大学の教授に収まり、自分が続けた金融政策の正当性を学生相手に説いているそうな。そのお説を是としない答案を書くと、不可になるのかな。


朝日新聞デジタル(2023年7月28日)
植田総裁は本当に「仕事人」なのか 微修正に留まった金融政策正常化

この世界的で歴史的なインフレ下でも主要国中央銀行で唯一、お金のばらまきを続けているのが日本銀行だ。だが、さすがに超金融緩和の単純な継続というわけにもいかなくなったのだろう。日銀は28日、政策の柱であるイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の一部修正に追い込まれた。
 
植田和男総裁になってから3回目の金融政策決定会合(年8回開催、メンバーは総裁以下9人)で初めての政策変更となる。
 
黒田東彦前総裁の時代の10年間、日銀はアベノミクスの主柱となる「異次元緩和」をずっと続けた。結果として政府債務の膨張と日銀の財務悪化が進み、その影響とみられる円安がエネルギー資源価格の高騰に端を発した国内インフレに拍車をかけている。
 
金融政策を知り尽くしている学者出身の植田氏が今春、総裁に就いた意味は、当然、この異次元緩和から抜け出し、金融政策を一刻も早く正常な状態に戻すことにあるはずだ。
 
金融市場はそういう理解で植田日銀の緒戦に注目してきた。だが4月、6月の決定会合でも植田日銀は動かず、金融市場は肩すかしを食った。3回目となる今回の決定会合でようやく一部修正に踏み切ったものの、内容的にはまったくの微修正である。
 
日銀ウォッチャーたちが注目していたのは、YCCの廃止に植田日銀がどう乗り出すかだった。日本国債が投機的なファンドなどから売り浴びせられたり、本来の長期金利の水準がゆがめられていたりといった問題点が多いのは、この政策が原因となっているからだ。
 
この点で植田総裁の真意はどこにあるか。読み解くカギは、まだ総裁人事が動き出す前の昨年7月、植田氏が日本経済新聞「経済教室」に寄稿した論考「日本、拙速な引き締め避けよ 物価上昇局面の金融政策」のなかにある。植田総裁の理論家としての本音がそこににじみ出ているからだ。植田氏はこう書いていた。
 
「今後、持続的な2%インフレの可能性が一段と高まってくれば、今回のような投機はより大規模に何度も発生すると予想される」
 
「難しいのは、長期金利コントロールは微調整に向かない仕組みだという点である。金利上限を小幅に引き上げれば、次の引き上げが予想されて一段と大量の国債売りを招く可能性がある」
 
「10年物金利コントロールを7年、5年と短期方向へ動かしていく案も同様の問題を抱えている」
 
この説明を虚心に受け取るなら、植田総裁の本音は早期にYCCを廃止することだったはずだ。それは金利上限の引き上げや弾力化、コントロール対象の短期化といった「修正」ではない。あくまで「廃止」である。
 
その点で今回の決定は、まだ植田総裁の考えがどこまで反映されたものか、やや解せないところが残る。YCCの設計者である内田真一副総裁ら執行部の影響も感じさせる。

「引き締め」のメッセージを避けたのか
植田氏も昨年の論考のなかで、金融引き締めに拙速に動くのは得策でないと強調している。おそらく基本的に「不出来な緩和策」であるYCCは撤廃し、マイナス金利など短期金利操作による金融緩和は当面続ける、という考え方だったのだろう。現時点では植田総裁にも「日銀が金融引き締めに転じた」というメッセージを出したくない、という思惑があるのかもしれない。
 
だが、昨今の日本経済をながめるなら、その考え方も実態と合わなくなっている。植田氏は昨夏の時点で、消費者物価上昇率が2%を超えるような世界的なインフレは長くは続かず、日本でも「2%のインフレ率を持続的に実現するという目標には程遠い」と述べている。
 
現実はどうか。米欧では一時ほどではないにしてもいまだにインフレがやまず、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)のどちらの中央銀行も今週、再び利上げを実施した。世界的なインフレの波は、植田論考から1年たっても続いており、想定よりずっと長期化しているのだ。
 
日本での物価高も1年前の想定を超える長さと広がりを見せている。
 
6月の全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比3・3%上昇となった。食品や飲料、洗剤など日々の生活を直撃するモノの値上げは続き、ハンバーガーなどの外食や携帯電話、ホテル宿泊料などにも値上げの動きが広がっている。
 
消費者物価指数の上昇率は6月まで、すでに15カ月連続で2%のインフレ目標を上回っている。さらにエネルギーを除いた指数でも9カ月連続でインフレ目標を上回っており、単純に海外発の資源高がもたらした一時的なインフレという次元を超えていることは明らかだ。
 
「海外発」「資源高」が理由のインフレは、日銀が望む形の物価上昇ではないから、金融引き締めはできない、という植田日銀の姿勢はもはや通用しなくなっているのではないか。
 
さらに見過ごせないのが、マンション価格の急上昇だ。不動産経済研究所の調べによると、今年上半期(1~6月)の首都圏の新築分譲マンションの平均価格は8873万円にのぼる。前年同期に比べ36%上昇した。東京23区の上昇ぶりはさらに激しく、平均価格1億2962万円、前年同期比で60%上昇している。もはや一般庶民には絶対に手が出ない水準にまで上がっているのだ。

マンション価格、庶民の手が届かない水準に
不動産市場はすでに1980年代後半のバブル経済並みの激しい資産インフレに近づいている、と見たほうがいいのではないか。あのバブル期には資産価格が急上昇していたものの、モノやサービスの価格の上昇がそれほどではなかったことから日銀の利上げが遅れ、後に日銀批判につながった歴史がある。
 
足元でのマンション価格の上昇理由が外国人買いによるものだとしても、それに拍車をかけているのが円安と日本の低金利であることはまちがいない。外国人が低コストで投資しやすい環境だからだ。
 
こうした面で、植田総裁が1年前に想定した経済状況は大きく様変わりしている。それでも本格的に動かない植田総裁は、いったい何をめざしているのか。本当に期待されているような、黒田日銀の負の遺産を処理し、金融政策を正常化するための「仕事人」なのか。
 
現時点では残念ながら、黒田日銀と同じように「緩和のわな」にはまって身動きが出来なくなっているようにさえ見える。(編集委員・原真人)
(引用終り)

注の一 イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)
日銀が2016年9月21日に導入を決めた政策。
 短期金利については、日銀当座預金の政策金利残高に、0.1%のマイナス金利を適用。
 長期金利については、10年物国債の利回りがゼロ%程度で推移するよう、長期国債を買い入れる。
改めて考えるイールドカーブ・コントロールの効果と副作用」(少し加筆)

注の二 10年物国債を日銀が大量に買い入れると、なぜ長期金利がゼロ%程度に抑えられるのか?と疑問に感じる読者は、拙文
 「長期金利はどう決まる?
をご覧下さい。
 素人の説明なんぞ誰が読むか?とお思いでしょうが、都内某国立大学・経済学部出身者と、証券会社勤務の経験のある同業者にチェックしてもらってあります。

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