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ぴあの(6)教則本『メトードローズ』を採用


正確には『メトードローズ ピアノの一年生』(Méthode Rose)。フランスのエルネスト・ヴァン・ド・ヴェルドが著した子供向け教則本です (音楽之友社、ピアニストの安川加寿子・訳編)。

 第一課 (p.5〜11) :ゼロから始める人向けの導入部。曲は全て、左右両手でオクターブ離れた同じ音を弾く。
 第二課〜第六課 (p.12〜59) が本体。

かっては日本でも『バイエル』と並ぶ人気を誇ったそうですが、最近はアメリカ系に押されているらしい。真価が充分理解されていないと思うので、長所を挙げます:

1)第二課から大譜表
  (右手はト音記号、左手はヘ音記号)
『バイエル』では上下106曲の内、64番まで両手ともト音記号。
 
まだそんなレベルじゃないのに摘み食いした入門用「カッチーニのアヴェマリア」で、ヘ音記号の線を一本一本数えながら音出しした苦労から、『バイエル』の方針には腹が立ちます。どうして、何も知らない私でもすぐ弾けるような指練習の段階から、左手をヘ音記号で表記しないのかと。
 
調べてみると、『バイエル』と『メトードローズ』の著者はそれぞれ、

 フェルディナント・バイエル(1806〜63)
 ヴァン・ド・ヴェルド(1862-1951)

まるで生まれ変りかと思うような時代差です。しかし、『メトードローズ』が子供向け入門なのに殆ど最初から大譜表なのは、時代の違いよりフランス流合理主義のお陰かも知れません。

2)p.20 で既に片手の音域が6度に広がる
『バイエル』では上下106曲の内、45番まで出て来ない。

3)p.24, 34 で既に♯や♭が出て来る
『バイエル』では上下106曲の内、69番まで出て来ない。

4)練習曲の作り
 左手はドを起点とする5度をカバーし、
 右手はソを起点とする5度をカバーする、
という組合せ、或いはその逆を用いるなど、手をまごつかせる発想も『バイエル』とかなり異っている。そのお陰で、左右の指が早く独立して動くようになる感じがする。

5)唯一、『大人のための 独習バイエル』上巻の方が良いのは、両手で弾き始めるまでに24ページも費やしていること。そこに、姿勢や手の構え方、音符に関する説明など、基本の基本が書いてあります。
 比べて『メトードローズ』はその部分に、第一課の7ページしか費やしていない。特に最初の数頁では、ページ内に譜面が立て込み、音符も目一杯詰め込まれて、非常に取っ付きが悪い。
 でも、大人がその辺を充分に理解して掛かれば、全く問題ありません。

それにしても音楽之友社は、どうして『大人のための 独習メトードローズ』を出そうとしないのか。 
 欠点がこれ程はっきりしている『バイエル』を、印刷すれば売れるという理由で出し続け、『メトードローズ』の方は改訂もせずに放っておく。一体どういう料簡なのだ!と詰め寄ってやりたい気分です。
 『大人のための 独習メトードローズ』を出せば、アメリカ系などを尻目に再び入門用教則本として脚光を浴び、大人の趣味のピアノに絶大なる貢献ができるというのに。


さて『バイエル』の時は、早く大譜表のところまで行かなければ、という焦燥感に駆られつつ、一時間もすると集中力が続かなくなる。時間を空けて同じような曲を弾く気にもなれず、その日はそれで終りでした。『メトードローズ』に移ってからは、これをじっくり・みっちりやれば良いのだと気分もリラックス。練習曲も『バイエル』より音楽性が感じられるので、夕方もう一時間やる元気が出てきました。

 一時間と言っても、肩も凝ってくるし首も回したくなる。二段か三段の曲を弾き終る度に立ち上って、肩をほぐしたり簡単なストレッチをしたりの、一時間です。

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